ある日の礼拝後、倉庫の椅子を出しているとゴキブリが飛び出してきた。居合わせた青年のN君は素早く二歩下がってじっと見つめ「これはどうかしないといけませんね。」と一言。
私がうんと頷くと、「これはこのままじゃまずいですよね。」ともう一言。
私が「うん、うん」と繰り返すと、彼は台所に走り殺虫スプレーを持って来て「これでやっつけてください。」と言う。
「え?君がするんじゃないの? 僕がするの?」
「はい、僕はこんなのに弱いんです。駄目なんです。」と言って、N君はまた二歩下がった。
そこに居たのは彼と私だけ。否応なく命じられた私は椅子やテーブルを一つ一つ動かしながら、奴が現れたらすぐにスプレーをかけようと構えていたが結局どこに隠れたのか二度と姿を現さなかった。
多分、次回皆さんの座る椅子の裏に潜んでいるのだと思います。
もう一つ自宅編、
家のお風呂で髪を洗っていると(私に洗うほどの髪が残っているかどうか疑問に思う方もおられるでしょうが、耳の周りにはまだあるのです)、何か黒いものが目の前にふわりと落ちてきたように感じた。しかしシャンプー中でよく見えないので、「何だろう?」と不思議に思いながらとりあえず頭を洗いシャワーを終わらせる。そして下を見ると、なんと私の左足を舐めるように黒いゴキブリがヒゲを揺らして構えている。
(ウエッ、ゴキだ!)
一瞬たじろいだ私は、しかし直ちにシャワーを吹きかけてゴキの接近を阻み、熱湯で殺そうとしたがあいにく39℃では死なない。
「おーい、おーい」私はあせりながら妻の救援を要請するが、一向に来ない。
しばらくして「何なの?」とやっと顔を出した彼女に、
「ゴキブリだ。ビニールをくれ」
「キャー!」と言いつつ、彼女は薄いスーパーのビニールを差し出す。
私はそれをめくるのももどかしく手を通し、良いお湯だ!と思っていただろうゴキをむんずと捕まえた。袋の中のゴキブリを見ながら妻は言った。
「あー、あなたの時で良かった! 私の時じゃなくて」
別にその意見に反対はしないが、あまりにしみじみ言われると複雑な思いになる。
それにしてもゴキよ、ごめんよ。私だって、本当はそんなに変わらない存在なのにね。
「しかし、私は虫けらです。人間ではありません。人のそしりの的、民の蔑みです。」 詩篇22:6
Comments